本年も宜しくお願い致します!
5年前に雑誌に掲載された『「古縮緬」と「木目込人形」』という題名の記事を以下にご紹介します。
『私の店では、長年「古縮緬木目込人形(雛人形・五月人形・兜)」をご紹介しています。ご自分用・インテリア用にお求めになる方もいらっしゃいますが、初節句のお祝いに購入される方が多いです。
写真だとわかりづらいのですが、普通の生地とは「色合い」「風合い」「質感」、すべてが違います。一般的な人形店で雛人形や五月人形をご覧になってから、私の店にいらして古縮緬木目込人形をご覧になると、「全然違いますね」「生地が素晴らしいですね」などのご感想をいただきます。
江戸・明治・大正・昭和初期の縮緬のことを総称して古縮緬と呼んでいます。
縮緬とは、絹を平織にした織物になり、縦糸は撚りのない糸を使い緯糸に撚りの強い糸を交互に織り、精練することで撚りが戻り、その戻りが布地全体に広がる「シボ」をつくりだします。シボがあることでシワになりにくくなるとともに、繊細な凹凸が染め上がりの色合いに深みを増します。特に幕末から明治頃までの絹のもととなる蚕は日本固有種で、キメの細かさ、薄さや滑らかさなどが今の時代のものとは明らかに違います。
店では様々な伝統工芸品を扱っていますので、本当に昔の日本人=ご先祖様はすごい!といつも思い知らされていますが、細かい柄を多数の色に染め分ける技術、長い年数が経っていても色褪せない古縮緬の生地も本当にすごい日本の宝だと思うのです。
よく、「人形は顔が命」と言いますが、お顔は良くて当たり前で、人間でもスーツを着るかジャージを着るかでまったく印象が変わるように、一番差がつくのは「衣装」です。衣装によって良し悪しが決まる、と言っても過言ではありません。
雛人形展は30年以上、五月人形展は20年以上開催していますが、何年も前に購入された方から、「何年経っても飽きがこない」「全然色も褪せない」「出し入れが簡単だから、毎年飾っています」「毎年飾るのが楽しみです」などのお言葉をいただいています。
しまいっぱなしが一番もったいないので、コンパクトで価値が有り、末永く飾れるお人形、ということで、大好評をいただいています。
ここまで生地・衣装のことを書きましたが、体は木の素材に筋を彫って、その筋に生地を入れ込んで着せていくので、木目込人形と呼びます。
頭(かしら)=お顔、は、胡粉(ごふん)という素材で仕上げています。
胡粉は、白亜とも呼ばれ、貝の殻を砕いてつくる白い顔料で、日本画の画材にも使われています。胡粉と粘着剤の膠(にかわ)を丁寧に練りこんだものが、美しく丈夫な頭づくりに使われてきましたが、扱いにくく技術的な修練を必要とします。
このような先人の「智慧と工夫」もすごい!と思います。
また、人形作りは分業制になっていて、それぞれの職人(プロ)として道や技を究めていくというのも素晴らしいことだと考えています。
今の世は、職人がやってきたことを機械にやらせたり、コストダウン・効率化を追及してきましたが、私達が豊かに幸せに暮らせるか、ということと無関係です。人の仕事を奪って逆に不幸や生き辛い社会を産み出しているように思いますし、世界最高の日本のものづくりを自ら潰す自殺行為になってしまっています。
早い・簡単・便利・安い、は豊かではありません。
難しいことや手間がかかることでも時間をかけて作り上げるゆとりや時間・余裕があることが豊か、なのではないでしょうか?
奪うのではなく、分かち合うこと。断絶ではなく、繋いでいくこと。
どんなに手間がかかっても良い物・本物・顧客に喜んでもらえるものを作る。
日本人が大切にしてきたそのような伝統を守っていきたいと考えています。』
※正食協会発行の月刊誌「むすび」2020年12月号より転載























