「俺が評価されるのは死んでから」保坂紀夫

2026-04-11 | 店のこと

3月29日の投稿「重要なお知らせ」
https://www.hosaka-n.jp/blog/cat01/7571.html
の中で、
⑥保坂紀夫の「蝶が舞うランプ」を20億円、またはそれ以上で購入していただける方・企業を募集
と書きました。これについて、ご説明します。

店主の父で竹の造形作家の保坂紀夫(1940~2017・山梨県甲斐市出身)は、「俺が評価されるのは死んでから」と言っておりました。
代表作の「希望の卵(蝶が舞うランプ)」など奇跡的な作品をいくつか残し、実物を実際にご覧になった方からは、「神の領域」「人間国宝以上」「世界の至宝」「史上最高傑作」などのご感想をいただきますが、その評価が日本・世界はともかく、地元山梨ですら、まったく広まっていない状態です。
息子は私しかいませんので、私には生きているうちになんとかしなくてはいけない使命があります。

スポーツの世界ですと、金メダル・ホームラン50本など素人でもわかる基準や数値がありますが、芸術の場合はそういったものがないので難しい部分があります。特に日本人は日本のものを過少評価し、外国はすごい、と刷り込まれていますので、尚更ですし、そもそも日本の凄さ・素晴らしさを知らない、ということも大問題です。

芸術の分野で誰でもわかる、ということになると、いくらで売れたか、というのは数値になりますので、わかりやすいかと考えました。
そこで今までに高額で売れた芸術作品を検索したところ、
歴代高額取引絵画ランキング・トップ25(2025年2月現在)
https://www.suiha.co.jp/column/sekaideitibantakaienoranking2021/
ダ・ヴィンチの作品、約4億5000万ドル(現在のレートだと約720億円)
上記ページに載っていますが、日本人の最高額は、奈良美智氏の約27億円(2020年2月現在)とのことですから、720億円以上で売れれば世界一、27億円以上で売れれば日本一、ということになります。

「希望の卵」は、「網目は蝶々の形をしていないのに360度蝶々の影が出る」という超奇跡的な作品で、世界の美術の歴史の中でも最高傑作と言っても良いと思いますので、720億円以上の値がついてもおかしくありませんが、今年は竹の造形美術館20周年ということもあり、「20億円、またはそれ以上の額で」と書きました。

2017年9月に紀夫が亡くなってから、父の作品は、一つも一度も販売したことがありません。
本人がいなくなったので、売ればその分だけ作品が減ってしまうからです。
ただ、今年は竹の造形美術館20周年ということもありますし、高額で売れることで、
①作品や本人の評価が高まる、広まる
②売れたお金が、竹の造形美術館と、紀夫が44年前に創業した店の維持や修繕、創立した祖父・保坂耕人文学館のために使える
のであれば、父にも許してもらえるのはないかと思っています。

「360度、蝶々の影が出る」こと自体が、”神様が授けてくれたのでは”というくらい奇跡的なことですが、他に保坂紀夫の作品・創作活動のどういう価値があるのか、6つ挙げてみます。
①ジャンル自体を創った
②日本の伝統技術が基礎になっている
③自然の竹という素材を最大限活かしている
④材料を自分で作り、その質が違う
⑤意匠(デザイン)・職人・芸術を一人でやった
竹細工でも竹工芸でも竹のクラフトでもない
⑦妻・保坂英美子(私の母・故人)の大きな支え(とても大変だった)がなければできなかった
=英美子は創っていませんが、紀夫・英美子の共同作品という意味

それぞれ、ご説明します。

①金メダルというのは、柔道とか水泳とか元々そういう競技やジャンルがあり、その中で世界一ということですが、竹の分野では、竹細工・工芸・クラフトは、やっている人はたくさんいますが、竹で編んだ芸術・アート、これはほとんどやっている人がいなかったのです。
分野自体を創った、というのが、元々ある分野で一番になる、ということとはまったく違う意味を持っています。
誰もやっていなかった新しい道を創った、切り拓いたということです。

②芸術は色々な分野がありますが、統的な技術が基礎になっていないものもたくさんあります。
保坂紀夫の作品は、日本の竹の統工芸・クラフトの技術が基礎になっています。竹は、ひご自体を自分で作らないといけませんが、ひご一つとっても、どれだけ手間をかけるか、どれくらいの程度のひごを作れるか、は違ってきます。美術館での解説ツアーの中で、紀夫が生前に制作している映像をご覧いただいており、氣が遠くなるような手間がかかる職人仕事です。昨年、竹の職人さんが美術館にいらした時に、紀夫が作ったひごを触ってもらった瞬間、「このひごは凄い!私にはこのレベルのひごは作れません」「ひごの質で、完成品の質も変わってくる」と仰っていました。

紀夫の作品は、日本の傳統技術がなければ、できなかったということです。
日本の傳統が素晴らしいからこそ、生まれた。そこに価値があるのです。

③竹という素材の特性を最大限引き出している。ということが言えます。
昔は、竹槍という武器にしたくらいの硬さもありますが、薄くすれば紙のようになるし、光を当てると赤味を帯びる。曲がる。反発力もあり、それらの特性を活かした作品群です。
そして、自然素材ですから、完成後も作品は「生きている」ので、年数が経つと飴色に変化していきます。

④ひごを自分で作るということは、技術があれば、長さも厚みも幅も自分の思い通りに作れます。ただ、自然素材ですから、均一に材料を作る・揃えるのは大変ですが、それも技術です。
紀夫は、「自分で材料を作れるのだから、創作できる可能性は無限」と言っていました。
一般的な工芸や芸術は、材料は材料屋さんから買ってくるものが多い(例えば、絵画であれば、キャンバスと絵の具と筆を買えば、小学生でも創作できる)ですが、竹はそういうわけにはいきません。

⑤意匠(デザイン)・職人・芸術を一人でやった
一般的には、デザイナーと職人と芸術家はそれぞれ別の仕事です。
何十年も竹の職人をやっている人も作れないものを創ったのです。だから、竹細工でも工芸でもクラフトでもない。
紀夫は工業デザイナーでしたから、元々立体のデザインのプロ。40歳過ぎてから職人技を習得し、傳統技術を駆使して、奇跡的な芸術作品を創作した。そういう人は、どこにもいない、唯一無二、です。

竹細工でも竹工芸でも竹のクラフトでもない
これについては、竹の造形美術館の解説ツアーにご参加いただくと、意味がおわかりいただけると思います。

妻・保坂英美子の大きな支え
偉業を成し遂げる裏には、それを陰で支える人がいるものです。
我が儘でマイペースな紀夫を妻・英美子が支え続けたお陰で、紀夫は制作を続けることができました。
今のご時勢なら、即離婚、というような大変さだった、と息子の私が見ていて思います。
なので、解説ツアーでは、「母なしでは、父はこのような作品を残せなかった。だから、父と母の共同作品」とお伝えしています。
英美子は2016年8月に亡くなり、翌2017年9月に紀夫も亡くなりました。英美子がいないと生きられない人だったのでしょう。

保坂紀夫・竹の造形美術館/日本の匠と美ほさか八ヶ岳店は、今年も5月1日(金)~9月23日(水・祝)の期間限定開館で事前予約制です。
https://www.bambooart.jp/
初回の方は、解説ツアー(保坂紀夫の生前の映像あり)にご参加いただいています。
上記HPからか、070-5013-1934へ2日前までにご予約ください。

引き続き、竹の造形美術館をお手伝いいただける方も募集しています。


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